第一歩、負担なく社内適正価格を蓄積する手順
建設業において、部材や工事の「適正価格」を持っているかどうかは、調達や積算の精度に直結します。
しかし実務では、協力会社ごとにフォーマットが異なり、過去見積はフォルダに散在、判断は属人的になりがちです。そこで本記事では、負担をかけずに“社内適正価格”を蓄積する最短ルートを、具体的なステップで解説します。
なぜ「社内」の適正価格が必要か
一般的な市場価格は参考情報に過ぎません。実際の調達価格は、数量・地域・取引関係・支払条件など自社固有の要素で上下します。だからこそ、自社が実際に契約した価格を継続的に蓄積し、検索できる状態にしておくことが重要です。部材単価の100円差が、大規模案件では数百万円~数千万円の差に跳ねることもあります。
具体的な手順(ステップ形式)
ステップ1:対象を「契約済み見積」に限定する
最初から全件を追うと続きません。まずは契約が確定している見積書だけを収集対象に。確度が高く、数量・条件も固まっているため“社内の正値”として扱いやすいのが利点です。
ステップ2:保管場所を一つに統一する
Box/SharePoint/Google Drive など、一次保管場所を統一します。プロジェクト単位フォルダ内に「01_契約見積」を設けるなど、迷わない置き場を決めます。社内ルールは1ページで明文化しましょう。
ステップ3:最小限の項目だけを抜き出す
Excelやスプレッドシートで最低限の4項目から開始:
- 部材・工種名
- 数量(単位)
- 単価(税別/税込のどちらかに統一)
- メーカー・型番(分かる範囲)
完璧主義を捨て、**“単価を引ける状態”**を優先します。
ステップ4:名称の表記ブレを抑える
同じものが「軽量鉄骨下地」「LGS下地」など別名で登録されると検索性が落ちます。まずは簡易辞書(例:許容別名 → 正式名称)を作り、入力時に参照。迷ったら正式名称に寄せる、というルールで十分です。
ステップ5:検索できる構造にする
列名を固定し、フィルタと並び替えで即座に引ける形に。プロジェクト名、協力会社名、契約日など補助列があると後から効きます。シート先頭に**検索用の簡易ビュー(フィルタ済みシート)**を用意すると現場が使いやすくなります。
ステップ6:日次/週次の“追記”を習慣化
「新たに契約締結 → その日のうちに1行追記」を原則化。過去をさかのぼるより、これからの分を確実に積むほうが継続します。担当者不在時の代替手順(誰が・どこに・どう入れるか)もメモで残します。
ステップ7:毎月のミニ振り返り
月末に10分のレビューを設定し、
- 重複行の除去
- 名称の統一(辞書の更新)
- 列の不足(新たに必要な項目の洗い出し)
だけを実施。ここで凝りすぎないのが長続きのコツです。
運用ルール(最小SOP)
- 保管先は常に同じ場所に置く(私的PC保存・メール添付の放置は禁止)。
- 追記は“契約確定日当日”が原則。無理なら週内に。
- 税区分は統一(例:税別で統一+消費税率列を別管理)。
- 書き方に迷ったら辞書を優先。辞書にない場合は追加してから入力。
- 変更履歴はシートの「更新履歴」タブに1行記録(誰が/何を/いつ)。
失敗あるあると回避策
- 最初から完璧を狙う → 続かない。最小項目でOK。
- 人によって列が増える → 列は固定。増やすときは全体合意の上で月末に。
- ファイルが分散 → 置き場は1つ。プロジェクトに紐づけても最終集計は1本に集約。
- 呼称がバラバラ → 簡易辞書を先に作る。迷ったら都度更新。
よくある質問(Mini FAQ)
Q. 過去分はどこまで遡る?
A. まずは直近3~6か月で十分。回るようになってから重点案件だけ遡りましょう。
Q. どの時点の見積を採用する?
A. 最終契約に紐づく見積(契約確定版)を優先。値引き・条件が反映済みで“社内の正値”になりやすいため。
Q. 単位がバラバラです
A. 社内標準に合わせて強制置換ルールを定義(例:m²/m³/個 以外は空白、など)。当面は備考列に原単位を残すと安全です。
まとめ
- 社内適正価格の最短構築法は、「契約済み見積」限定で始めること。
- 最小項目で“引ける状態”を先に作り、名称辞書+統一保管+定期レビューで回す。
- 継続的な追記が、やがて現場の即断即決と利益率の底上げにつながります。
まずは今日の契約見積から、1行だけでも追記してみましょう。ここからすべてが始まります。
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