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AIに積算を任せてみたら、意外な結果に…

「AIに積算なんて無理だろう」——正直、私も最初はそう思っていました。
ところが、実際に“人の判断ログ”を学習させたAIに見積・積算を任せてみると、期待していた正確さよりも、“気づきの質”のほうが先に跳ねました。AIは単に数字を出すだけでなく、抜け漏れや表記ゆれ、仕様の矛盾まで突いてくる。今回は、建設業の実データ(契約済み見積+社内適正価格DB)を用いた小さな検証で見えた“意外な結果”を共有します。

実験の前提と設計

  • 対象:協力会社から提出された複数フォーマットの見積書
  • 下準備:
    • AI-OCRで明細データ化(品名、型番、数量、単位、単価、金額)
    • 単位補正ルールの適用(m、m2、m3の取り違いや、個、式の整理など)
    • 社内適正価格DB(自社の取引実績)と突き合わせ
  • AIの役割:
    1. 抜けや漏れの検知
    2. 単価の外れ値アラート
    3. 仕様の矛盾指摘
    4. 代替案の提案
    5. 過去案件の引用を含む根拠付きの見解提示

見えてきた「意外な結果」ベスト5

  1. 抜けや漏れの検知力が高い
     特に見落としがちな付帯作業や養生、搬入・搬出といった項目をパターン化してリストアップ。「このスコープなら通常は含まれるはず」といった指摘を先に出すので、チェック作業が一気に効率化されます。
  2. 単位の取り違いを文脈から正す
     例えば、床コンクリートの単位をm3と誤記していても、AIが平面施工のためm2への補正を提案します。数量や単位、歩掛の整合を行ごとに検証し、金額計算のミスも見つけやすくなりました。
  3. 「市場一般」ではなく「自社一般」を基準にする
     相場サイトの平均値ではなく、自社の取引履歴=社内適正価格と比較。「どの案件でなぜこの単価だったか」まで根拠付きで提示できるため、購買時の交渉や判断が早くなります。
  4. 仕様の矛盾やリスクも文章から拾う
     備考欄の一文(例:「雨天順延」)から工程リスクを抽出し、予備費や工程調整の必要性をアラート。数字に表れない「将来の手戻りコスト」にも目が届きやすくなりました。
  5. 値下げ交渉より条件見直しの提案が出る
     単なる値引き要求ではなく、代替材や規格変更、発注ロットの見直しなど、Win-Winの解決策を提示。関係性を損なわず利益率の改善につながります。

定量的なインパクト(簡易試算)

  • 見積1件あたりの確認時間が30〜45%削減(抜け漏れチェックの自動化)
  • 単価の外れ値の早期発見で、案件ごとに1〜3%の原価改善が見込める
  • 社内DB突合により、「根拠探し」の時間を大幅短縮

※データ規模や品目によって効果は異なりますが、全件レビューから例外レビュー中心に変わるのが大きな効果です。


現場の声(抜粋)

  • 「人が最終判断する前提なら、AIの先回りチェックは心強い」
  • 「根拠が明確なので会議が短くなった。感覚論の衝突が減った」
  • 「値下げよりも条件設計の提案がAIから出てくるのは想定外だった」

導入の進め方(スモールスタートがおすすめ)

  1. データを決める:まずは契約済み見積から始める(確度が高く、学習価値が大きい)
  2. ルールを決める:単位補正、歩掛の根拠層、付帯作業の定義
  3. 「社内適正価格」を作る:過去実績をDB化し、メーカーや型番、ロットで整理
  4. AIの役割分担:
    • AIは一次検算・例外抽出・根拠提示
    • 人は例外判断・交渉・最終決定
  5. 振り返りを学習に:差異の理由を「判断ログ」として残し、AIに継続学習させる

よくある誤解と対策

  • AIがすべて判断すると思われがちだが、AIは「下ごしらえ」と「根拠提示」を担う。最終判断は人間が行う。
  • 相場DBがあれば十分と思われがちだが、単価は取引条件や数量で大きく揺れるため「自社一般=社内適正価格」を優先。
  • 全て一気通貫で入れないと効果が出ないと思われがちだが、まずは検算・例外抽出から始めて効果が出た領域を徐々に広げる。

まとめ

AI積算の「意外な結果」は、正確な数字以上に、判断の再現性やコミュニケーションの質を先に変えることでした。抜け漏れが減り、根拠が明確になり、交渉が建設的になります。利益率とスピードが両立する仕組みができあがります。

最初の一歩は、契約済み見積のDB化と、単位や付帯の共通ルール作りから。AIは「人を置き換える」のではなく、判断の土台を整える相棒として活用できます。

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ベイカレントにてIT・業務改善・戦略領域のプロジェクトに従事。その後、株式会社ウフルにて新規事業開発を担当し、Wovn Technologiesでは顧客価値の最大化に取り組む。AIスタートアップの共同創業者としてCOOを務めた後、デジタルと人間の最適な融合がより良い社会につながるとの想いから、株式会社YOZBOSHIを設立。2022年2月より現職。

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