2025年、経理部が変わる。建設業の“電帳法対応”リアルガイド
現場は紙、取引はデータ。本社はクラウド。――混在を前提に“合格点”を取りにいく、建設会社のための実装ガイドです。※本記事は一般情報です。最終判断は顧問税理士等にご相談ください。
まず押さえる「電帳法」5つの要点(2025年版・超要約)
- 電子取引は“紙出力保存だけ”が不可
請求書や見積書などをメール/ポータルで授受したら、電子データのまま保存が必要。宥恕は終了し、令和6年1月1日以後は改正後要件での保存が原則です。国税庁+1 - 保存の三本柱
- 真実性の確保(改ざん防止):タイムスタンプ、速やかなタイムスタンプ、訂正削除の記録が残るシステム、事務処理規程運用のいずれか。
- 可視性(見読性):ディスプレイ/プリンタで表示・出力できること。
- 検索性:日付・金額・取引先で検索でき、日付と金額は範囲指定、2項目以上の組合せ(AND/OR含む)が必要(小規模等の特例あり)。国税庁+1
- 保存期間
法人は原則7年(法人税等の法定保存年数に従う)。国税庁 - クラウド/海外サーバもOK
保存場所のPCから速やかに画面表示・書面出力できるなら、SharePoint/Google Drive/Box等のクラウドや海外サーバ利用も認められます。国税庁 - スキャナ保存も“現実解”
紙で受け取る書類はスキャナ保存制度を使えば電子化一元管理が可能(要件は緩和済み、ただし上記の真実性・検索性の考え方は同様)。Invalid URL
建設業“あるある”に刺さる実務設計(実装の考え方)
- 案件・現場単位が基本軸:
フォルダやメタデータは「会社 > 年度 > 事業部 > 現場コード > 文書種別 > 月」の粒度を推奨。JV・代理発注・出来高・前金・差引相殺など建設特有の勘所はメタデータ列で吸収。 - 混在前提でルール化:
「メール添付」「ベンダーポータルDL」「アプリ決済」「紙」…入口ごとに標準オペ(誰が・いつ・どこへ・どう名付け・何の列を埋めるか)を定義。 - “検索性”は設計で担保:
ファイル名だけに頼らず、取引日(必須)/金額(税抜/税込どちらか統一)/取引先(正式名称)を必ず列で保持。後段BIや調達DBとも親和。国税庁
SharePoint派/Google Drive派:おすすめ構成
要素SharePoint(Microsoft 365)Google Drive(Google Workspace)推奨保管先ドキュメントライブラリ(案件/年度ごと)共有ドライブ(部署/案件ごと)メタデータ列:取引日(Date)、金額(Number)、取引先(Text)、書類種別、現場コード、伝票番号、JV名Driveラベルで同等項目を作成(またはDocu→Apps Scriptで表に集約)改ざん防止バージョン履歴+アクセス権/Microsoft Purviewで監査ログバージョン履歴+監査ログ(Admin)/ドライブ監査タイムスタンプ代替事務処理規程+運用記録で代替(または外部TS)同左(規程+監査ログ)検索要件列条件検索+日付/金額の範囲(ビュー/フィルタ)ラベル検索+日付/金額の範囲(クエリ運用)受領メール対応Power Automateで指定フォルダ→自動格納&列反映Gmail+Apps Script/自動振分+ラベル付与
ポイント:「列(ラベル)」を“必須入力”に。SharePointは列の必須化、Googleはアップロード時にフォームでラベル必須化のフローを作ると抜け漏れが激減。
名付けルール(現場×取引でブレない)
YYYYMMDD_取引先_金額_書類種別_現場コード_伝票番号.pdf
例:20250331_株式会社○○設備_110000_請求書_渋谷PJ-A_110009.pdf
※ファイル名は可読性重視。真正性と検索性の担保は“列”で。国税庁
事務処理規程の“肝”だけ押さえる(ミニ雛形)
- 適用範囲:全役職員・委託社員を対象に電子取引データの扱いを定義
- 保存責任者:経理部長、処理責任者:経理課長(例)
- 受領方法別フロー:メール/クラウドDL/アプリ決済/EDIごとに保存先・期限・入力項目を明文化
- 改ざん防止:原則、訂正削除禁止。やむを得ず訂正削除時は申請→承認→証跡保存(申請日・対象ファイル・理由・実施者・承認者を記録)
- 監査対応:ダウンロード提供の求めに応じられる体制を明記(小規模特例の根拠にも)。国税庁+1
入口別・実務レシピ(抜け漏れゼロ運用)
- メール添付:
受信箱→「取引書類」ラベル/フォルダ→自動保存(件名や本文から取引日・金額・取引先を抽出→列に書込)→受領元メールのコピーも保管(証跡)。国税庁 - ベンダーポータルDL:
DLした時点が“授受”。都度DLして保存。定期DLが可能ならスクリプト化。DL不可の期間があるサイトは画面の確認可能期間をメモし、税務職員の求めに応じDL提供できる体制を明記。国税庁+1 - アプリ決済・カード明細:
明細データも保存対象(アプリ提供者経由の授受でも)。国税庁 - ネットバンキング:
支払実績は取引情報に該当。入出金明細PDF等を保存(銀行窓口振込のみ書面保存でOKのケースあり)。国税庁+1
小規模特例(検索要件の緩和)を賢く使う
- 税務職員のダウンロード要請に応じられる体制があれば、範囲指定等の一部検索要件が不要。
- 基準期間売上5,000万円以下等の事業者には、さらに緩和の扱い。詳細は最新Q&Aの該当項を確認。国税庁
90日で“合格点”を取りにいくロードマップ
Day 0–14(設計)
- 対象の洗い出し(メール/DLサイト/アプリ/紙)
- 列(ラベル)スキーマ確定:取引日・金額・取引先・書類種別・現場コード・JV名・伝票番号
- 事務処理規程ドラフト(入口別フロー/訂正削除/ダウンロード対応)
Day 15–45(構築)
- SharePoint/共有ドライブ & ラベル作成、必須化
- 自動化(Power Automate/Apps Scriptでメール→保存→列反映)
- テスト監査:検索、範囲指定、AND/OR、ダウンロード一式
Day 46–90(移行・教育)
- 既存年分の移し替え(優先度:進行中案件→完了案件)
- 現場・購買・経理 合同トレ(“どの入口から来ても同じ置き方”)
- 月次レビュー(エラー率・未入力列・DL応答SLA)
よくある“落とし穴”と回避策
- ファイル名だけで検索を満たした気になる → 列で担保し、ビューで検算。国税庁
- DLサイトの“見えるだけ”で安心 → “見えた時点が授受”。DLし保存。国税庁
- 海外クラウドは不可と思い込み → 表示・出力が速やかならOK。保存場所PCからの出力可否で判断。国税庁
- 紙スキャンは別世界 → スキャナ保存も同じ思想(真正性・検索性)。規程運用で現実解。Invalid URL
現場×本社で使えるミニチェック(壁貼り用)
- 受領方法ごとの置き場と締切が決まっている
- 取引日/金額/取引先が**列(ラベル)**で必ず入る
- 日付/金額の範囲検索、2条件以上AND/OR検索をその場で再現できる
- 訂正・削除は申請制、記録を残して保存期間中保持
- 税務職員のDL要請に即応できる(フォルダ/ビュー/書式ひな型)
- クラウドでも保存場所PCから即出力できる
建設会社の“勝ち筋”:電帳法対応を調達DXの土台に
- 電子化で集まった契約済み見積や請求を現場コード×品目で横断検索できると、社内適正価格DBが自動で育つ。
- 仕入れ交渉やJV内の整流化に効く“社内の一般価格”が見えるようになる。
- 現場判断の再現性が上がり、調達コスト低減と粗利改善が月次で回り始める。
もしツールで一気通貫したいなら
Connected Baseなら、メール/ポータル/紙の混在入力を一元化、取引日・金額・取引先などの列を自動付与し、SharePoint/Boxのメタデータまで書き込み。ダウンロード提供/訂正削除ログもレポート化できる設計で、電帳法の“合格点”運用を支援します。
Connected Baseのご紹介
「AI-OCR」「RPA」から
“LLM+人の判断”の再現へと移りつつあります。
Connected Base は、日々の見積書・請求書・報告書など、
人の判断を必要とする“あいまいな領域”を自動で処理し、
現場ごとのルールや判断のクセを学習していくAIプラットフォームです。
これまで人が時間をかけて行ってきた仕分けや確認を、
AIとルール設定だけで再現・蓄積・自動化。
単なる効率化ではなく、「判断の継承」まで含めたDXを実現します。
現場の知恵を未来につなぐ──
その第一歩を、Connected Baseとともに。



コメントを送信