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購買データをAIが読む ― “利益を守る購買DX”の始め方

はじめに:利益は“購買”で決まる

売上はコントロールしづらくても、購買は今日から変えられます。
見積・発注明細、仕入先とのやり取り、納品・検収、支払。これらに散らばる“価格の根拠”をAIに読ませて可視化し、社内適正価格を武器に交渉・意思決定を標準化する——それが「利益を守る購買DX」です。

いま起きている3つの課題

  1. 価格のブレ:同一品目でも部署・現場で単価がまちまち
  2. 情報が紙とファイルに分散:PDF/画像/メール/チャットに埋もれる
  3. 属人化した交渉:根拠が“勘と経験”に寄りがちで再現しづらい

解決のカギ:AIで“読む→揃える→使う”を自動運転

  • 読む(AI-OCR/LLM):見積書・納品書・請求書・メール本文から、品目/規格/数量/単位/単価/メーカー/カタログ番号/現場名/ファイル名・日付などを抽出
  • 揃える(正規化):単位補正(m↔m²↔m³ 等)、表記ゆれ統一(例:「ステンレス」「SUS」)、型番・メーカーのカノニカル化
  • 使う(意思決定)社内適正価格レンジを算出し、見積比較・交渉根拠・承認ワークフロー・BI可視化へ

最初の90日ロードマップ

Day 0–30:データ集約と“読む”

  • 対象を限定(例:上位30品目 or 上位仕入先10社)
  • 既存PDF/画像/メール添付を一括投入(BOX/SharePoint/Drive)
  • 例外含め元帳票の内容を改変しないを唯一ルールに抽出

Day 31–60:“揃える”仕組みづくり

  • 単位補正ルール雛形
    • m, m², m³, 個 以外の不明単位は空欄
    • 代表例:外構コンクリート→m³/床・保護・均しモルタル→m²
  • 品目マスター:メーカー+型番+規格+単位でキー化
  • 現場コード/成本コードの付与(後工程の集計に効く)

Day 61–90:“使う”運用へ

  • 見積比較ビュー:中央値・最頻値・四分位のレンジ提示
  • 交渉差益=(見積平均単価−合意単価)×数量 を自動集計
  • 稟議テンプレートに“AI根拠欄”を追加(再現性ある承認)

まず揃える推奨データ項目(最小セット)

区分フィールド例品目メーカー/カタログ番号/規格TOTO/TMGG40E/13A数量数量/単位(補正後)120/m²価格単価(税抜)/小計/通貨4,850/582,000/JPY文脈現場名/工事名/成本コードA支社_第3倉庫/土間/C-102取引仕入先/見積日/有効期限〇〇商事/2025-09-15/30日証跡原本ファイルID/ページ/抽出信頼度file_abc.pdf/3/0.92交渉提示単価レンジ/交渉メモQ1中央値±10%/配送条件調整


KPI設計(“守れた利益”を見える化)

  • 交渉差益(¥):月次・現場別・品目別
  • 単価乖離率:合意単価÷社内適正中央値−1
  • 社内適正価格カバレッジ:レンジ算出済み品目比率
  • 仕入先集中度(HHI):過度な依存を避ける指標
  • 自動読取成功率:再入力・修正の削減度合い

よくある落とし穴と回避策

  • 品目が粒度バラバラ → 「メーカー+型番+規格+単位」を主キー化
  • 単位のカオス → 先に“単位辞書”を作り、例外はログ化して後追い補正
  • AIの過信 → 信頼度閾値を設け、低スコアは人がレビュー(人×AIの二段構え)
  • 導入過剰 → まずは“購買額の大きい上位20%品目”から

ミニケース(イメージ)

  • 年間購買2億円、上位30品目で平均8%の差益改善 → 1,600万円/年のコスト圧縮
  • 稟議と現場照合を自動化し、月20時間/現場の事務を削減(監督の本業回帰)

まとめ:データが“判断の共通言語”になる

AIは万能ではありませんが、読む→揃える→使うを丁寧につなぐだけで、属人化した購買は“再現できる判断”に変わります。まずは上位品目から、90日で“守れる利益”を体感しましょう。


付録:運用テンプレ(そのまま使える)

見積比較テンプレ(稟議添付)

  • 対象品目:[メーカー+型番+規格+単位]
  • 社内適正価格レンジ:P25–P75(中央値:¥X,XXX)
  • 提示単価:仕入先A ¥x,xxx/B ¥x,xxx/C ¥x,xxx
  • 合意単価:¥x,xxx(中央値比 −△%/交渉差益 ¥△,△△△)
  • 交渉メモ:納期短縮・配送条件変更で単価調整

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ベイカレントにてIT・業務改善・戦略領域のプロジェクトに従事。その後、株式会社ウフルにて新規事業開発を担当し、Wovn Technologiesでは顧客価値の最大化に取り組む。AIスタートアップの共同創業者としてCOOを務めた後、デジタルと人間の最適な融合がより良い社会につながるとの想いから、株式会社YOZBOSHIを設立。2022年2月より現職。

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