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電帳法対応、SharePoint派? Google Drive派? 建設業に最適な選択はどっち

この記事のゴール

  • 電帳法(電子帳簿保存法)対応では「真実性の確保/可視性の確保/検索要件」がキモ。まずここを満たす運用を設計。 (国税庁)
  • SharePoint(Microsoft 365)もGoogle Drive(Google Workspace)も、監査ログ・保持(Retention)・改ざん防止の仕組みを備えており、設計次第で対応可能。 (Microsoft Learn)
  • 建設業は「現場単位・案件単位の運用」と「協力会社との電子取引データの一元管理」が勝敗を分ける。既存のグループウェアやワークフロー連携(Power Automate / Apps Script)との親和性で選ぶのが実務的。

1) 電帳法の“最低限”をさくっと整理

対象

  • 帳簿・書類を電子で保存(電子帳簿等保存)
  • 紙をスキャンして保存(スキャナ保存)
  • 電子取引(PDF請求書、メール添付、WEB受領データ等)のデータ保存(2024年1月から義務) (国税庁)

要件の要点

  • 真実性の確保:訂正削除の履歴、タイムスタンプ等で改ざん抑止
  • 可視性の確保:見読でき、帳簿間の関連をたどれる
  • 検索要件:日付/金額/相手先など主要キーで検索可能であること(範囲検索・組合せ検索ができることが望ましい) (国税庁)

スキャナ保存の補足:解像度やカラー要件等の技術条件がある(例:A4で200dpi以上など)。 (国税庁)


2) 両者の“電帳法的”チェックポイント早見表

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どちらも“機能は揃う”。自社の標準ツール/社内ITスキル/協力会社とのやり取りに合わせて選ぶのが本質。


3) 建設業“あるある”運用を満たす設計テンプレ

A. フォルダ&メタ設計(現場・案件ドリブン)

  • 命名規則:`[案件番号][現場名][年度]`
  • サブ階層:`見積/契約/注文/出来高/請求/検収/変更契約/設計照会/証憑`
  • メタ項目(必須)
    • 取引日(yyyymmdd)
    • 取引先(協力会社名)
    • 金額(税抜)
    • 請求区分(出来高/締め)
    • 文書種別(見積/請求/納品/契約 等)
    • 電子取引/スキャン/電子帳簿 等の区分

SharePoint:ドキュメントライブラリので管理。
Google Drive:Driveラベル(プルダウン/日付/数値)で管理し、Vaultの保持条件に利用。 (Workspace Updates Blog)

B. 権限と監査

  • 現場単位のグループ(監督・工務・購買)+協力会社単位の共有ポリシー
  • 承認済フォルダは更新不可(編集権限を外す/ファイルを記録管理ステータスへ)
  • 監査ログの定期エクスポート(四半期)で証跡を長期保存
    • M365:Purview監査の検索・保持ポリシーを要件に合わせて設定。 (Microsoft Learn)
    • Workspace:管理コンソールのDriveログ+Vaultエクスポートで証跡化。 (Google ヘルプ)

C. 電子取引データの“取りこぼしゼロ化”

  • メール添付→自動取り込み
    • M365:Power Automateで件名パターンから現場フォルダ振分・メタ自動付与
    • Workspace:Gmail+Apps Scriptでラベル→Drive振分・Driveラベル付与
  • ポータルDL(電子請求)→自動保存
    • API/ロボットでダウンロード→所定フォルダ→メタ付与
  • 検索要件担保:メタで日付/金額/相手先を必須入力(未入力は承認に進めない) (国税庁)

4) 「最小構成」で今日からできるセットアップ

SharePoint(M365)

  1. サイト&ライブラリを現場テンプレとして作成(列:取引日/相手先/金額/文書種別 等)
  2. コンテンツタイプで書類種別を定義、承認フローをPower Automateで実装
  3. Search/eDiscoveryのキーワードセットを保存(案件番号+相手先+期間) (Microsoft Learn)
  4. **Audit (Standard/Premium)**の保持方針を設定(必要に応じ10年保持)。 (Microsoft Learn)

Google Drive(Workspace)

  1. 共有ドライブを現場テンプレとして作成、Driveラベルで日付/相手先/金額/種別を必須化
  2. Vaultでデフォルト保持(例:7年)+ラベル条件付きのカスタム保持を設定、重要書類はホールド対象に。 (Google ヘルプ)
  3. 管理コンソールのDrive監査ログで定期レビュー用の保存検索を作成。 (Google ヘルプ)

注意:Vaultの保持設定は誤ると即時削除の危険。まずは限定ユーザーでテストしてから全社適用を。 (Trailhead)


5) どっちを選ぶ?—建設業の判断基準

  • 既存の主力ツール:Teams/Excel中心ならSharePoint、Gmail/スプレッドシート中心ならDrive
  • 監査の厳格さ:長期の監査ログ保持・eDiscoveryワークフローを強く求めるなら、E5/Purviewを揃えたSharePointがわかりやすい。 (Microsoft Learn)
  • メタ運用の柔軟さ:Driveラベル×Vaultのラベル条件保持で現場別・文書別の細粒度制御をしたいならGoogle Driveも有力。 (Workspace Updates Blog)
  • 協力会社の実情:相手先のメール・クラウド文化に合わせると、**受け渡しの摩擦(アカウント問題・リンク制限)**が減る。

6) よくある落とし穴(実話ベース)

  • 「保存はしたが検索できない」:ファイル名だけで運用すると検索要件を満たせない。メタ項目(ラベル・列)の必須化が必須。 (国税庁)
  • 「電子取引の一部が個人PCに散在」:メール添付・ポータルDL・チャット添付を自動で収斂させる仕組みを最初に作る。
  • 「承認後に更新されていた」:承認完了で記録管理状態へ(編集不可/改版時は別版として保存)。
  • 「証跡の保持が短い」:監査ログの保持期間はライセンスとポリシーに依存。要件に合わせて延長設定を。 (Microsoft Learn)

7) 参考:電帳法の“原典”リンク

  • 検索要件(電子取引の保存):国税庁Q&A該当箇所。 (国税庁)
  • スキャナ保存の技術要件(200dpi など):国税庁パンフ。 (国税庁)
  • スキャナ保存の開始手続き(令和6年1月以降用):国税庁資料。 (国税庁)

(各クラウドの監査・保持の仕様は、Microsoft PurviewGoogle Vault/管理コンソールの公式ドキュメントを参照) (Microsoft Learn)


8) 実運用サンプル(コピペ用)

推奨ファイル名

[案件番号]_[文書種別]_[協力会社名]_[取引日yyyymmdd]_v01.pdf
例)A24-103_請求書_サンプル建設_20250131_v01.pdf

copy

メタ/ラベル(必須)

  • 取引日:2025-01-31
  • 相手先:サンプル建設
  • 金額(税抜):12,345,678
  • 文書種別:請求書(見積/注文/納品/検収/契約/請求)
  • 区分:電子取引/スキャナ/電子帳簿

週次チェックリスト

  • [ ] 電子取引の未収斂(個人メール・チャット添付)がゼロか
  • [ ] メタ未入力のファイルがゼロか
  • [ ] 監査ログの異常共有(外部共有・大量DL)がないか
  • [ ] 承認済みフォルダの更新イベントがゼロ

9) それでも迷うなら——“連携と拡張”で決める

  • M365の深い活用(Teams、Power BI、Power Automate、eDiscovery)を伸ばしたい → SharePoint優位。 (Microsoft Learn)
  • Driveラベル×Vaultの保持で現場別・文書別の保持設計を高速に回したい → Google Drive優位。 (Workspace Updates Blog)

10) おまけ:Connected Baseの使いどころ(建設業)

  • 協力会社から届くバラバラな見積・請求を自動で分類→メタ付与→所定フォルダ投入
  • 文字カスレや単位表記ゆれの吸収、社内適正価格DBづくりに直結。
  • SharePoint/Google Driveどちらにも配置できる“中継機”として、電帳法運用に再現性を与える。

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ベイカレントにてIT・業務改善・戦略領域のプロジェクトに従事。その後、株式会社ウフルにて新規事業開発を担当し、Wovn Technologiesでは顧客価値の最大化に取り組む。AIスタートアップの共同創業者としてCOOを務めた後、デジタルと人間の最適な融合がより良い社会につながるとの想いから、株式会社YOZBOSHIを設立。2022年2月より現職。

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