【連載3/3】ベテランの“嗅覚”、仕組みにしよう ― 価格ラダー・比率カード・正規化・例外ログ
「結局、勘なんでしょ?」——よく言われます。
でも実際は、幅のある基準(ラダー)と、釣り合いを見る比率、それから入口の整え(正規化)とひとこと理由メモ。
この4つを道具として並べれば、嗅覚はちゃんとチームで回ります。今日はその“据え付け方”を、肩の力を抜いて一気にいきます。
1) 価格ラダー:点じゃなく“幅”で持つ
単価は1本の正解じゃなくてレンジで動きます。
だから最初に「最低–中央値–上限」の三点を決めておき、地域・季節・規模で軽く補正できるようにしておくのがコツ。
イメージ
品目単位最低中央上限備考足場(材工)m28001,0001,200冬+5%/山間+5〜10%生コン 21-8-20m312,00014,00016,000回送・距離で上下
使い方はシンプル。レンジ外なら黄色信号、理由をひと言。
点で殴らず、幅で会話するのが続く運用のコツです。
2) 比率カード:釣り合いを見る“ものさし”
次は“勘どころ”のバランス。ここも幅でざっくり握るだけで効きます。
比率ペア目安黄信号赤信号何を見る?材料:工賃6:4前後±20%超±35%超手順/難易度の想定ミス付帯費(運搬+ポンプ)/ 生コン0.08–0.18外れ大外れ回送回数・距離の根拠共通仮設 / 総額0.05–0.15外れ大外れ積み漏れ・内訳の薄さ
「外れた=ダメ」ではなく、“止めて理由を聞く”ためのカードです。
3) 正規化フィルタ:入口5分の“儀式”
ここは効果がバツグン。最初に揃えるだけで、後の1時間が静かになります。
- ㎡/m² → m2、㎥/m³ → m3
- 箇所/ヶ所/ヵ所/カ所/ケ所/カ所 → か所
- 「〃」「”」「11」 → 直前行コピー(名称・仕様・単位に限定)
- 半角統一(m/m、kg/kg を混ぜない)
“人でも機械でも”OK。入口で必ず通す、それだけです。
4) 例外ログ:長文いらない、1行で十分
黄色や赤のときに必要なのは、決断の跡です。
書き方は「条件 → 影響 → 補正」の三点。ひと言でいい。
- 「搬入制限(幅2.5m)→回送+2回 → 運搬+15%」
- 「夜間(22–5時)→ 割増+25%」
- 「高所(GL+18m)→ 養生+安全費 別計上」
“未来の自分(や後輩)が読めるか?”だけを基準に。
5) 現場と開発の共通言語(人が読めるYAML)
コードが苦手でも読める、日本語っぽいルールにしておくと会話が早いです。
- rule: "単位_正規化"
target: ["単位"]
replace:
"m²|㎡": "m2"
"m³|㎥": "m3"
"箇所|ヶ所|ヵ所|カ所|ケ所|カ所": "か所"
- rule: "同上補正"
target: ["名称","仕様","単位"]
detect: ["〃","”","11"]
action: "前行コピー"
- rule: "足場_単価_レンジ"
match: { item: "足場", unit: "m2" }
check: 800 <= unit_price <= 1200
on_violation: "ラダー外。運搬/養生/難易度の理由を1行で"
- rule: "共通仮設_相場幅"
check: 0.05 <= common_temp/total <= 0.15
on_violation: "明細分解 or 例外理由を記録"
6) 導入の順番:小さく始めて、太らせる
- 正規化だけ先に(事故の8割がここで止まります)
- 価格ラダーは上位5品目から(毎週2品目ずつ増やす)
- 比率カードは2枚に絞る(材料:工賃/共通仮設:総額)
- 例外ログはフォーム化(必須・選択肢多め・自由記述は短く)
- 月1の誤検知レビューでしきい値を痩せさせる
“増やす”より“削る”。回る最小集合に磨くのが続く秘訣です。
7) すぐ使える“回る運用”の型
- 警告2段階:注意(進行OK)/重大(要修正)
- 見える化:黄色・赤の件数と代表理由をダッシュボードに
- KPI:再見積率↓、積み漏れ補正額↓、例外コメント平均字数(短いほど◎)
- 棚卸し日:四半期に1回、ラダーと比率を更新
まとめ:嗅覚=道具 × 習慣
“見ただけで分かる”の正体は、
- ラダー(幅の基準)
- 比率カード(釣り合いの目安)
- 正規化(滑り止め)
- 例外ログ(判断の跡)
の4点セット。これを“入口5分+ひと言メモ”で回せば、属人知はチームの武器になります。
さあ、明日の見積から幅→方向→釣り合いの順で、軽く止めて、短く残していきましょう。
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