建設見積DXは、なぜ「AI-OCR止まり」になるのか。
スキャンはした。でも、現場は変わらなかった。
「AI-OCR、入れたんですよ」
そう言って、どこか言い訳みたいな笑いを浮かべる担当者がいます。
紙の見積をスキャンして、データ化もできた。
それっぽいダッシュボードも一瞬は作れた。
でも数か月後、現場はこう言います。
「結局、Excelで直してますね」
…この“結局”の重さ。
建設見積DXの多くが、ここで止まります。
AI-OCRは悪くない。むしろ優秀です。
それでも、なぜDXは前に進まないのか。
答えはシンプルで、残酷です。
建設見積の地獄は「読めないこと」ではなく、「揃わないこと」だから。
「読み取れたのに、使えない」現象
AI-OCRで見積書を読む。
数字も項目も、確かに抽出できる。
なのに集計に使おうとした瞬間、画面の空気が変わる。
- 数量の単位がバラバラ(㎡ / m2 / 式 / 一式)
- 「材工共」か「材のみ」か、どこにも書いてない
- 値引きがどこに効いてるのか不明(行なのか、全体なのか)
- 注記がセル外に散らばっている(しかも重要)
- “見積”なのか“概算”なのか“参考”なのか曖昧
この瞬間に、担当者の脳内で鳴ります。
「あ、これは人が見ないと無理だ」
そしてExcelが開かれる。
フォーマットの違い? いや、“粒度”の違いです
よく言われるのは「各社でフォーマットが違うから難しい」。
それも正しい。でも本当の壁は、もう一段深い。
“粒度”が違う。
たとえば同じ「仮設工事」でも、
- A社:大項目→中項目→小項目→数量→単価→金額
- B社:小項目だけがズラッと並ぶ(階層がない)
- C社:仮設が「雑工事」に吸収されている
- D社:「運搬費」が“共通仮設”に入ったり“現場経費”に入ったりする
ここで何が起きるかというと、
元請け側がやりたい“横串集計”が成立しません。
見積書は、同じ「表」に見えて、実際は別の言語です。
AI-OCRは翻訳ではなく、文字起こし。
文字は取れる。でも意味は揃わない。
見積書は「表」ではなく「文書」だ
見積書を“表”として扱うと、だいたい痛い目に遭います。
なぜなら見積書は、表の形をした「契約前の文書」だからです。
重要なのはセルの中ではなく、表の外にあります。
- 「別途」
- 「参考」
- 「実行精算」
- 「条件により増減」
- 「単価は暫定」
このへんは、見積の“雰囲気”を決めるキーワードですが、
AI-OCRの抽出結果ではただの文字列になりがち。
そして、こうなります。
“数字だけは立派に揃ってるのに、意思決定に使えない”
怖いのは、間違ってても気づけないことです。
そして最後に残るのは「担当者の頭の中」
DXが止まる最大の理由は、ここです。
見積集約って、結局こういう判断の連続です。
- 「この項目、今回は“共通仮設”でいいよね」
- 「この会社の“雑材”は、いつもここに寄せる」
- 「これは“直接工事費”じゃなくて“現場経費”にした方が自然」
- 「端数はここで吸収しておく」
つまり、建設見積の集約は
“人の判断”で成立している業務
なんですよね。
AI-OCRが進化しても、
この“寄せ方”は自動では決まりません。
決めるには「ルール」と「文脈」が必要だから。
Excelに戻るのは、怠慢じゃなく合理です
ここで一度、Excelを悪者にするのをやめましょう。
現場がExcelに戻るのは、合理です。
- 俯瞰できる
- 直せる
- 例外に強い
- 説明しやすい(なぜそうしたかが語れる)
つまりExcelは、最後の砦ではなく
“判断のインターフェース” になっている。
AI-OCR導入後にDXが止まるのは、
DXのボトルネックが「読み取り」から「判断」へ移っただけです。
じゃあ、どうすれば“次”へ進めるのか
AI-OCRが「目」だとしたら、
次に必要なのは “頭”と“手” です。
1) “判断”を仕組みにする
誰が、どう寄せたか。
その判断が、次回以降に再利用できる状態になっているか。
ここができると、DXは一段進みます。
「担当者の頭の中」を、資産に変えられる。
2) “整形”を仕組みにする
粒度を揃える。
例外を扱う。
注記を拾う。
“集計に耐える構造”に変換する。
この段階までいって初めて、
「見積集約が運用として回る」状態になります。
まとめ:AI-OCR止まりは、失敗じゃなく“入口”
AI-OCRは入口として正しい。
でも、入口で止まるとこうなります。
- 読めるが、使えない
- データはあるが、集計できない
- だからExcelで直す
結局、建設見積DXの本丸はここです。
“人の判断を再現できる状態”をつくれるか
読めるようになった次に、
“揃えられるか”。
“使える形にできるか”。
ここを越えた会社だけが、見積DXを「定着」に持っていきます。
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