建設見積をAI-OCRにかけたら、結局Excelで直していた話
AI-OCRを入れたのに、なぜか最後はいつもExcelが開かれている。
建設業の見積集約では、これが“あるある”になりがちです。
「OCRで文字は取れている。なのに、数字が合わない」「項目がズレる」「結局コピペして整える」
この“Excelに戻る現象”には、ちゃんと理由があります。
AI-OCRで「できた気」になる瞬間
AI-OCRをかけた直後は、たいていこう思います。
- おお、読めてる
- 罫線もそれっぽく取れてる
- 表もCSVっぽいものになってる
でも、ここからが本番です。
見積は「読めた」だけでは使えません。“集約できる形”に揃って初めて価値になるからです。
Excelに戻る理由①:見積は「表」ではなく「解釈」が本体
建設見積で本当に厄介なのは、文字認識の精度よりも、次の部分です。
- これは「数量」なのか「単価」なのか「金額」なのか
- 「一式」のとき、数量をどう扱うか
- 端数処理・丸め・値引・調整の扱い
- 税区分(外税/内税/非課税)や小計の階層
- “諸経費”がどの階層に入っているか
- 見出し行なのに金額が入っている(または逆)
OCRは文字を取れます。
でも、その行を「どう扱うべきか」の判断は、現場の暗黙知になっていることが多い。
だから、最後にExcelで直す。
これは“運用が悪い”というより、見積の構造がそうさせる側面が大きいです。
Excelに戻る理由②:会社ごとに「粒度」と「書き方」が違いすぎる
元請として集約したいのは同じでも、協力会社の見積はこうなります。
- 明細が細かすぎる会社 / ざっくり一式の会社
- 品名に型番が入る会社 / 摘要に全部入る会社
- 単位が m2 / ㎡ / 平米 / M2 で混在
- 「材工共」「支給」「別途」などの表現がバラバラ
- そもそも表の列構成が違う(数量が左だったり右だったり)
結果、AI-OCRが出力したデータが“正しく”ても、横並びにできない。
そして横並びにする場所が、みんな大好きExcelになります。
Excelに戻る理由③:集約のゴールが「Excelの提出」になっている
現場や社内のフロー上、こういう事情も強いです。
- 予算会議のフォーマットがExcel
- 発注稟議がExcel
- 上長チェックがExcel(コメント・色・差分ハイライト)
- 過去データ比較のマクロがExcel
- 協力会社への差戻しもExcel(赤入れ文化)
つまり、AI-OCRの出力がどんなに頑張っても、
最終提出物がExcelである限り、Excel編集作業はゼロになりません。
ここを無理にゼロにしようとすると、逆に現場が回らなくなります。
Excelに戻る理由④:エラーの“責任の所在”がExcelに集まる
AI-OCRの出力に少しでも不安が残ると、担当者はこう動きます。
- 「このまま出すのは怖い」
- 「突合してからにしよう」
- 「一旦Excelで整えてから出そう」
結局、最終責任を持つ人が安心できる形がExcelであり、
そこで“人が目視で保証する”流れが残ります。
じゃあAI-OCRは意味がないのか?
そんなことはありません。
AI-OCRは、入力労力を減らす“入口”としては強いです。
ただし、建設見積のボトルネックは入口ではなく、たいていここです。
- 集約ルールに合わせる(列・粒度・階層・単位)
- ミスを潰す(突合・税・小計・値引)
- 例外処理を回す(会社ごとの差、案件ごとの差)
つまり、“読む”から“使える”に変える工程が残る。
これが「結局Excelで直していた」の正体です。
Excel修正を減らすために、現実的に効く4つの打ち手
1) 先に「揃えたい形(正解のExcel)」を決める
まず、集約後のExcelがどうあるべきか。
列、階層、単位、税、見出し扱い…ここが曖昧だと永遠に直します。
2) “自動で直すルール”と“人が決めるルール”を分ける
- 文字の表記統一、単位変換、列マッピング → 自動化しやすい
- 階層判断、諸経費の扱い、値引の解釈 → 人の判断が残りやすい
分けるだけで、Excel作業が「全部手作業」から「例外処理」に変わります。
3) 修正結果を“次回に活かす形”で残す
ここが重要です。
Excelで直した内容が、ただの“今回限りの手直し”になっていると、次回も同じ直しが発生します。
- どの項目をどの列に寄せたか
- どんな表現をどの分類にしたか
- どの会社の見積はどんなクセがあるか
これを“判断ログ”として残せると、ようやく改善が積み上がります。
4) 最後はExcelでもいい。ただし「直す場所」を減らす
現場がExcel提出を求めるなら、Excelは残ります。
でも、直すのがExcelしかない状態を脱せれば、作業量は一気に減ります。
まとめ:Excelに戻るのは、AI-OCRが悪いからではない
建設見積は、文字を読むだけでは終わりません。
“揃える”“解釈する”“保証する”が必要で、そこにExcelが強すぎる。
だから、AI-OCRの次に考えるべきはこうです。
- どう揃えるか(ルール)
- 誰の判断か(責任)
- その判断を次にどう残すか(再現)
ここまで設計できたとき、ようやく
「AI-OCRにかけたら、Excelで直していた」が
「AI-OCRにかけたら、Excelは確認だけになった」に変わっていきます。
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