協力会社ごとに“書き方が違う”問題、フォーマットでは解決しない。—現場で起きている「統一の限界」ルポ
「これ、どっちの意味ですか?」
電話口の現場事務が、苦笑いまじりに言う。
相手は協力会社の工務担当。話題は、届いた見積内訳。
「“雑工事一式”って書いてあるんですけど、どこまで入ってます?」
「え、いつも通りです」
「その“いつも通り”が会社によって違うんですよ……」
建設書類の問題は、形式に見えて、実は意味の問題だ。
そしてこの“意味のズレ”は、テンプレ配布では消えない。
1. よくある改善:テンプレを配る(そして、崩れる)
会議で出る定番の流れ。
- 「協力会社の提出書類がバラバラ」
- 「だからフォーマットを統一」
- 「Excelテンプレを配って提出してもらう」
ここまでは正しい。
少なくとも、見た目(列・項目・体裁)は揃う。
でも現場の受信箱には、こういうメールが積まれていく。
- 「この形式、うちのシステムだと出せないのでPDFで…」
- 「合わないところは備考に書きました」
- 「社内ルールで材料と手間は分けられません」
結論:揃うのは“形式”まで。中身は揃わない。
2. 問題の本体は「同じ言葉なのに意味が違う」
現場が困るのは、列ズレよりも、こっち。
例:「配管工事一式」の中身が会社で違う
- A社:材料+施工+支持金物+撤去処分まで含む
- B社:施工のみ(材料は別)
- C社:工程一括(内訳は社内にはあるが出さない)
テンプレで列を作っても、そもそも協力会社側の「切り方」が違う。
だから、揃いようがない。
3. さらに厄介:同じ会社でも“書く人”で変わる
同じ会社なのに、書き方が変わるパターン。
- ベテラン:短く書く(暗黙知前提)
- 若手:丁寧だが粒度が合わない(一般化しがち)
- 多忙:とりあえず「一式」で逃がす
フォーマットが揃っても、判断材料が揃わない。
4. 「統一すれば楽になる」は、現場では逆になりがち
統一プロジェクトが進むほど、現場はこう忙しくなる。
- 備考欄の情報を拾う
- 会社ごとの書き方を読み替える
- 社内の科目に当て直す
- 不明点を電話確認する
✅ 起きていることはこれ:
協力会社の“整形コスト”が、元請に移ってきているだけ。
5. なぜ統一できない?(協力会社側にも理由がある)
「協力してくれない」で片づけると終わらない。
統一できないのは、怠慢ではなく構造の問題。
- 積算システムが違う(出力粒度が違う)
- 利益の作り方が違う(どこで利益を乗せるか)
- 見積文化が違う(材料手間分離が常識/工程一括が常識)
- 詳細を出すと交渉が増える(後で首が締まる)
つまり書き方は、会社の仕組みそのもので決まっている。
6. 必要なのは「統一」ではなく「翻訳」
ここで発想を変える。
✖ 全員に同じ言語を話させる(統一)
○ 違う言語のまま受け取り、こちらの基準に翻訳する
やるべきことは、例えばこう。
- 「一式」を見たら、過去傾向・文脈から内訳を推定
- 協力会社ごとの「この書き方=この意味」を蓄積
- 元請の予算科目・社内ルールに自動で当て直す
- 不確実なものだけ、人が確認する(全部じゃない)
現場が欲しいのは「綺麗なExcel」ではなく、
確認電話が減る世界だ。
7. まとめ:フォーマットは“入口”、勝負は“意味の再現”
- フォーマット:見た目と入力の型は揃う
- 書き方:意味と粒度と判断は揃わない
揃わないものを無理に揃えようとすると、現場が疲弊する。
なら、揃わない前提で翻訳の仕組みを持つ。
“書き方の違い”を、手間ではなくデータに変える。
これが、見積集約の次の一手になる。
Connected Baseのご紹介
「AI-OCR」「RPA」から
“LLM+人の判断”の再現へと移りつつあります。
Connected Base は、日々の見積書・請求書・報告書など、
人の判断を必要とする“あいまいな領域”を自動で処理し、
現場ごとのルールや判断のクセを学習していくAIプラットフォームです。
これまで人が時間をかけて行ってきた仕分けや確認を、
AIとルール設定だけで再現・蓄積・自動化。
単なる効率化ではなく、「判断の継承」まで含めたDXを実現します。
現場の知恵を未来につなぐ──
その第一歩を、Connected Baseとともに。


