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「生成AI」とは何か? ― ChatGPTの中で起きていること。

「生成AIって、ほんとうは何をしているの?」
この問いに、もう一歩だけ踏み込んで、手触りのある言葉で答え直してみます。

1|AIは“考える”のではなく、“続ける”

ChatGPTは、あなたの言葉の“次”に最もふさわしい語を、確率の地図から選び続けています。
それは新発見のひらめきというより、人類の語りのパターンをなぞり直す営み。
だから温度を感じる。学んでいるのは冷たいデータではなく、人の痕跡だから。
逡巡、断言、言いよどみ、ユーモア――無数の“人らしさ”が統計の形で折り重なって返ってくるのです。


2|中で起きていること(超訳)

  • トークン化:文章を小さな単位に砕く。
  • 注意(Attention):直前だけでなく、文全体・指示全体の「今ここで大事な部分」に重みを置く。
  • 分布の更新:「次に来やすい語」を瞬時に並べ替える。
  • サンプリング:1語を選び、また分布を更新する――その反復で文章が伸びる。

ここで起きているのは、連続の精度の勝負です。
“わかってくれている”ように感じるのは、文脈のどこを見るか(重みづけ)が、驚くほど巧妙だから。


3|人は“意図”を読み、AIは“流れ”を返す

AIの出力に“本来の意図”はありません。
けれど、人間はそこに意図を読み取る生きものです。
鏡に映る自分の表情から物語を作るように、問い方・前提・期待が、AIの言葉に輪郭を与える。

だから、問いの設計は成果の半分

  • 誰の視点で?(初心者/現場責任者/投資家)
  • 何を優先?(正確さ/スピード/網羅性)
  • どこまで断定?(仮説と事実の線引き)
  • どの形式で?(箇条書き/表/JSON)

4|弱点とどう付き合うか(“もっともらしい誤り”への処方箋)

生成AIは、ときに自信満々に間違えます。ここを怖がらず、型で飼いならす

  1. 根拠を要求:「出典・計算式・前提を示して」
  2. 境界を引く:「事実/推測/不明を分けて」
  3. 比較で検証:「AとBの一致点・相違点・未確定点」
  4. 人が締める:採否は人間の責任で決める(レビュー項目を先に宣言)

小さな技:“不明は不明のまま”という指示は効きます。ムリに埋めない。


5|現場で効く“問いのテンプレ”(コピペOK)

目的テンプレ

あなたは【役割】です。目的は【目的】。前提は【前提】。制約は【制約】。
出力は【形式】。不明は「不明」と記載。最後にリスクと次の一手も。

例:投資家向け要約

あなたは投資家向けのアナリスト。目的は決算説明の要点整理。
前提:一次情報を最優先。制約:推測は別枠。形式:見出し+箇条書き。
不明は不明のまま。最後にQ&A想定を3つ提示。

例:現場オペ手順

あなたは現場リーダー。目的:手順の誤解をなくす。
制約:1ステップは2文以内。チェックポイントとNG例を併記。
形式:番号付きリスト+最終チェックシート(表)。

6|“計算”と“決断”の線引き

任せられる:要約、下書き、比較表、抜け漏れ検知、言い換え、例外候補の列挙。
任せられない:価値判断・責任の所在・最終方針の選択
AIの価値は「答え」より素材化と視野の拡張
意思決定の前段を圧縮し、人は本丸(決断)に集中する――これが正しい使い分け。


7|仕事での具体シーン(5選)

  1. たたき台作成 → 比較審査
     3案を“狙い・長所・リスク・必要コスト”で整形。会議の冒頭5分で方向性が定まる。
  2. 要件の“言語化”
     曖昧な要求を「必須/任意」「受入条件」「例外」まで分解。仕様の手戻りを減らす。
  3. 会議メモ → 決定事項の確定
     議事録から「決定事項」「宿題」「期限」を抽出し、誰が“何をいつまでに”。
  4. 表の統一・比較
     呼称ゆれ(社名・単位・型番)を正規化し、差額の理由を候補化。人が最終確認。
  5. 対外文書の“トーン合わせ”
     同じ内容を、現場向け/役員向け/顧客向けに言い換え、温度と語彙を最適化。

8|ミニ実験:7日で“使いこなし感”をつくる

  • Day1:今週の会議体の“決定事項だけ”を抽出
  • Day2:社内文書を「要点3つ+リスク1つ」に圧縮
  • Day3:既存手順を“NG例つき”で再記述
  • Day4:2つの案を「採用条件」と「不採用条件」で比較
  • Day5:メール文を受け手別に3バリエーション
  • Day6:社内の用語ゆれ一覧を作成(正規化ルールを草案化)
  • Day7:1週間の学びを「再現できる手順書」にまとめる

コツ:毎回プロンプトも保存。翌週の自分が最強の先生になります。


9|“問いの深度”を上げる3ステップ

  1. 観点を足す:「コスト」「安全」「CS」の3観点で再評価して
  2. 根拠を掘る:「さきほどの結論、2つの根拠と反証を」
  3. 逆条件で試す:「あえて採用“しない”前提で論じて」

この“反復”が、AIとの対話を思考の筋トレに変えていきます。


10|それでも心が動く理由

AIは模倣です。けれど、ときに私たちの盲点を撃ち抜きます。
無数の語りの中に沈殿した人の迷いと誠実さが、統計として立ち上がるから。
AIと向き合う時間は、自分の問いを磨く時間でもあります。


結び:鏡としてのAI、設計者としての私たち

生成AIは、あなたの問いの形に忠実な鏡です。
上手に問えば、上手に映す。曖昧に問えば、曖昧を返す。
だからこれからのキーワードは、“問いの設計”と“人の最終判断”

AIが考える時代ではない。
AIと問いを設計し、一緒に考える時代。
私たちは、もうその入口をくぐり始めています。

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ベイカレントにてIT・業務改善・戦略領域のプロジェクトに従事。その後、株式会社ウフルにて新規事業開発を担当し、Wovn Technologiesでは顧客価値の最大化に取り組む。AIスタートアップの共同創業者としてCOOを務めた後、デジタルと人間の最適な融合がより良い社会につながるとの想いから、株式会社YOZBOSHIを設立。2022年2月より現職。