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生成AIで変わる“見積・報告書”のつくり方。

「またExcelを直すのに半日かかった…」――フォーマットが会社ごとに違う見積書、写真が大量に貼られた現場報告。人の目と根性で揃える時代は終わります。
これからは、AIが「読み、揃え、組みなおし」、人が最後に決める流れに変えましょう。

1. なぜ今、作り方を変えるのか

  • フォーマットの多様化:PDF/画像/Excelの混在、社名表記ゆれ、単位のバラつき
  • スピード要求:提案・精算の回転が早いほど勝てる
  • 説明責任:数字の根拠をあとから辿れる状態が求められる

生成AIはここで効きます。バラバラの原本をAIに読ませ、構造化→既定テンプレに自動配置。人は差分と例外に集中する――これが新しい作り方のコアです。


2. 新時代の“見積・報告書”5原則

  1. 原則1:JSON First(最初に構造化)
     原本から表形式データに必ず起こしてから、Word/Excel/PDFを生成。
  2. 原則2:人の判断はルール化して再利用
     型番の拾い方、合計行の扱い、単位補正などを辞書・ルールに残す。
  3. 原則3:テンプレは自動組版
     レイアウト(罫線・書体)はテンプレ、内容はデータで差し込み。
  4. 原則4:エビデンスは双方向リンク
     各セルに「原本ページ/座標/画像」へのリンクを保持。
  5. 原則5:変更はすべてログ化
     誰が・何を・なぜ直したかを残し、次回のルール学習に回す。

3. Before/After:作り方の比較

Before

  • メールやBoxから原本ダウンロード
  • 目視でコピペ&整形
  • 版ズレ・表記ゆれで差戻し
  • 根拠探しに時間

After(生成AI併用)

  1. 受け皿に原本一括投入(PDF/画像/Excel)
  2. AI-OCR+LLMで構造化(JSON化)
  3. 正規化(社名ゆれ・単位補正・品名/型番分割)
  4. テンプレ自動組版(Word/Excel自動生成)
  5. 差分レビュー(AIが怪しい箇所をハイライト)
  6. 出力&エビデンス紐づけ保存(Box/SharePoint)

4. 見積の作り方(実務レシピ)

4.1 最低限そろえる“項目スキーマ”

{
  "発行元": "",
  "宛先": "",
  "件名": "",
  "見積番号": "",
  "見積日": "",
  "有効期限": "",
  "通貨": "JPY",
  "明細": [
    {
      "行番号": "",
      "名称": "",
      "型番": "",
      "品質・形状・寸法": "",
      "数量": "",
      "単位": "",
      "単価": "",
      "金額": "",
      "備考": ""
    }
  ],
  "小計": "",
  "消費税": "",
  "合計": ""
}

4.2 AIに守らせるルール例

  • 全行出力:空欄でも明細は1行ずつ必ずJSON出力(欠落禁止)
  • 型番の抽出:名称に含まれる型番(例:AB-1234)を「型番」へ分離
  • 仕様の抽出:「20×30」「2,000mm×50,000mm」等は「品質・形状・寸法」へ
  • 単位補正:m2→㎡、m3→m³、本/台/式の表記統一
  • 合計行の扱い:行明細と集計を混在させない(集計はフッタ側に分離)
  • 社名ゆれ正規化:「三井金属」「三井金属株式会社」「Mitsui…」「K.K.」等を辞書で同一名に

4.3 レビューを速くするUIのコツ

  • 差分ハイライト:前回見積との差額・単価差だけ色付け
  • 信頼度フラグ:AIが自信なしのセルだけ要チェック
  • 原本ジャンプ:セルから原本の該当箇所へ1クリックで移動

5. 報告書(週報・出来高・施工計画)を“データから起こす”

5.1 章立てテンプレ(例)

  1. 表紙(案件名/工期/作成日)
  2. 概況(天候/安全/出来事)
  3. 進捗(出来高・工種別実績・前回差分)
  4. 課題と対策(未決課題・担当・期限)
  5. 写真台帳(自動キャプション、撮影日、位置情報)

5.2 自動化ポイント

  • 写真→キャプション:AIが工種・部位・状況を推定し候補を提示
  • 出来高→グラフ:日/週の数量推移を自動生成
  • ToDo抽出:メール/議事/チャットから課題を要約し章に差し込み
  • 差し戻し減:章ごとに必須フィールドを強制(空欄なら出力不可)

6. 実装アーキテクチャ(おすすめ)

  • 取得:メール/Box/SharePoint/Teamsから自動収集
  • 解析:AI-OCR(レイアウト抽出)+LLM(項目マッピング)
  • 正規化:辞書(社名・単位・型番)、例外ルール(if…then…)
  • 組版:Word/Excelテンプレ+差し込み(番号/見出し/目次自動)
  • 保存:バージョン管理・監査ログ・エビデンス紐づけ
  • 連携:RPA/Power Automate/Azure Functionsでワークフロー化

7. 導入ステップ

  • STEP 0:要件固定
    既存テンプレート(出力見本)を“正”として固定。
  • STEP 1:ルール化
    10〜数十件の原本で例外辞書(社名・単位・型番・合計行)を作る。
  • STEP 2:PoC
    自動化→レビュー→修正→ルール更新のループで精度を上げる。
  • STEP 3:本番
    エビデンス紐づけと変更ログを標準運用に。

8. Excelの“罠”を避けるチェックリスト

  • セル結合・改行に依存しない(値はセル1つ=1情報)
  • 罫線や色に意味を持たせない(意味は列名で持つ)
  • 全角/半角・記号表記を統一(㎡/m²、×/x、−/–)
  • 社名・型番・規格の別列化
  • PDFは傾き/解像度を確保(300dpi目安、斜行は補正)
  • テンプレのフォント・余白を固定(再現性の源)

9. 成果の出しどころ(KPI例)

  • 作成・差し戻し・捜索の所要時間の削減
  • 差戻し原因の可視化(ゆれ・単位・合計行の誤差)
  • トレーサビリティ(エビデンス→出力セルの往復)
  • 再利用性(次回見積・次案件報告への横展開)

10. すぐ使える“雛形プロンプト”

目的:原本の見積をJSONに機械的に落とす

【唯一絶対ルール】
- 明細表のすべての行を、空欄でも1行ずつJSON出力する(削除・結合・除外禁止)
- 名称に含まれる型番は「型番」へ、仕様は「品質・形状・寸法」へ分離
- 単位表記は社内基準へ正規化(例:m2→㎡, m3→m³)

【出力JSONスキーマ】
(4.1のスキーマに完全準拠。項目順は変更不可)

まとめ

見積も報告書も、まずデータ、次にレイアウト。
属人の勘所はルールとしてAIに渡す。人は決めることに集中する。
この作り方に切り替えると、スピード・精度・説明責任の三立てが進みます。

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ベイカレントにてIT・業務改善・戦略領域のプロジェクトに従事。その後、株式会社ウフルにて新規事業開発を担当し、Wovn Technologiesでは顧客価値の最大化に取り組む。AIスタートアップの共同創業者としてCOOを務めた後、デジタルと人間の最適な融合がより良い社会につながるとの想いから、株式会社YOZBOSHIを設立。2022年2月より現職。